シンク下のカビが賃貸で発生したら?掃除・予防から退去時の注意点

シンク下のカビが賃貸で発生したら?掃除・予防から退去時の注意点 キッチン周り
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「最近、賃貸物件のシンク下にカビらしきものがある…」と悩んでいませんか?扉を開けると黒い粉が落ちていたり、ベニヤ板や木製部分が湿っていたりすると要注意です。実は、カビだらけのまま放置してしまうと、賃貸の退去時に高額な費用を請求される可能性があります。しかし、正しい知識があればトラブルは防げます。

この記事では、100均グッズも活用できる簡単なカビ対策から、効果的な防カビシートの選び方、根本的な臭いの消臭方法まで、シンク下のカビに関する賃貸トラブルを総合的に解決するための知識を分かりやすく解説します。

この記事で分かること!
  • シンク下にカビが発生する原因と放置するリスク
  • 100均グッズも活用した具体的なカビの除去と消臭方法
  • 賃貸物件における退去時の費用負担と原状回復義務
  • カビの再発を防ぐための効果的な予防策

シンク下のカビが賃貸にできる原因と自分でできる対処法

シンク下がカビ臭い主な原因とは?

  • シンク下がカビ臭い主な原因とは?
  • 新築なのにカビだらけになる理由
  • シンク下の黒い粉はカビなのか
  • シンク下のカビは放置してもいい?
  • 賃貸物件でシンク下が臭いときの対処法
  • ベニヤ板・木製のカビの取り方
  • 100均グッズでできる掃除方法
  • カビ取り後の嫌な臭いの消臭方法

シンク下がカビ臭い主な原因とは?

シンク下から漂うカビ臭いニオイは、多くの場合、そこに繁殖したカビが放出する微生物揮発性有機化合物(MVOC)が原因です。では、なぜシンク下は家の中でも特にカビが発生しやすいのでしょうか。その理由は、カビが繁殖するための理想的な条件である「湿度」「温度」「栄養源」の3つが、いとも簡単に揃ってしまう閉鎖的な環境だからに他なりません。

原因1:常に高い湿度と結露の発生

カビが活発に繁殖を始める湿度は、一般的に60%以上とされていますが、シンク下は容易にこの数値を超えてしまいます。主な湿気の供給源は、内部を通る給水管と排水管です。特に夏場や暖房の効いた冬の室内で、管の中を冷たい水が流れると、管の表面と周囲の暖かい空気との間に大きな温度差が生まれます。これにより、空気中の水分が冷やされて水滴に変わる「結露」が発生します。

この結露水がシンク下の底板を濡らしたり、空間全体の湿度を80%以上に引き上げたりして、カビにとって最高のジメジメした環境を作り上げてしまうのです。

原因2:空気が循環しない密閉空間

キッチンの美観を保つため、シンク下の扉はほとんどの時間を固く閉ざされています。この密閉された状態が、カビの繁殖を強力に後押しします。空気が全く流動しないため、一度発生した結露やこもった湿気が外部に逃げることができません。常に湿潤な状態が維持されることで、空気中に浮遊しているカビの胞子が壁や床に付着し、容易に根を張り、成長していくのです。

原因3:カビの餌となる豊富な栄養源

カビは有機物であれば何でも栄養源にしてしまいます。シンク下は、カビにとってのご馳走が豊富な場所と言えます。

  • ホコリや髪の毛
  • 調理中に出る油汚れや食材の小さなカス
  • こぼれた調味料の液だれ
  • 米や小麦粉など乾物の粉
  • 洗剤や石鹸の残りカス

これらは掃除が見落とされがちな場所に蓄積し、高い湿度と相まってカビの温床となります。

見えない水漏れが最大の原因になることも
給排水管の接続部分に使われているゴム製のパッキンは、約10年で寿命を迎える消耗品です。経年劣化で硬化したりひび割れたりすると、そこからごく微量の水が常に漏れ出していることがあります。木材部分が常に湿っている、原因不明のシミがあるといった場合は、専門家による点検を検討すべきサインかもしれません。

新築なのにカビだらけになる理由

新築なのにシンク下がカビだらけになる理由

「新築物件を選んだのだから、カビとは無縁のはず」と考えるのは当然です。しかし、実際には入居後わずか数ヶ月でシンク下がカビだらけになってしまうという、ショッキングな事例は後を絶ちません。これには、近年の住宅事情と施工過程に起因する、新築特有の理由が深く関わっています。

最大の要因は、住宅基礎であるコンクリートの乾燥不足です。打設されたばかりのコンクリートは大量の水分を含んでおり、その水分が完全に放出されるまでには一般的に1~2年、場合によってはそれ以上かかるとされています。この乾燥過程で放出された湿気が床下空間に充満し、換気が不十分な場合、室内の最も湿気がこもりやすいシンク下に侵入してカビを発生させるのです。

さらに、現代の住宅は省エネのために非常に高い気密性を持つように設計されています。これは冷暖房効率を高める一方で、意識的な換気を行わないと湿気が外部に排出されにくいというデメリットも持ち合わせています。特に、キッチンで強力な換気扇を回すと、室内の気圧が外よりも低い「負圧」状態になります。このとき、シンク下の配管を通すために床に開けられた穴の隙間処理(コーキングなど)が不十分だと、まるで掃除機のように床下の湿った空気を室内に吸い上げてしまうのです。

新築時の内覧会で必ずチェックすべきポイント
入居前の内覧会では、居室の壁紙や床の傷だけでなく、必ずシンク下の扉を開けて中を確認しましょう。配管と床の間に不自然な隙間が開いていないか、懐中電灯などで照らしてチェックすることが重要です。もし隙間があれば、その場で施工会社に気密処理を依頼してください。この一手間が、後々の深刻なカビトラブルを防ぎます。

シンク下の黒い粉はカビなのか

シンク下に現れる黒い粉はカビなのか

シンク下で黒く細かい粉のようなものを発見した際、その正体はほとんどの場合「黒カビ」か、あるいは「害虫(特にゴキブリ)のフン」のいずれかです。どちらも衛生的に極めて問題があり、放置は許されませんが、正しく見分けることでその後の対策が大きく変わってきます。

黒カビとゴキブリのフンは一見似ていますが、注意深く観察すれば見分けることが可能です。それぞれの特徴を下記の表で比較してみましょう。

黒カビ ゴキブリのフン
形状・質感 非常に細かい粉末状、またはスス状。ティッシュなどでこすると筋状に伸び、広がる。 0.5mm~2mm程度のハッキリとした粒状で硬い。乾燥しており、こすっても伸びない。
発生場所 湿気の多い壁や床、木材の表面に、染みのように広がるように付着している。 部屋の隅や角、物の裏側など、通り道になりやすい場所に点々と散らばっている。
ニオイ 特有の「カビ臭」、土やホコリが湿ったような不快なニオイを放つ。 フン自体に強いニオイはほぼ無いが、他のゴキブリを呼び寄せる「集合フェロモン」が付着している。
危険性 アレルギーや喘息の原因となる胞子を飛散させる。建材を腐食させる。 サルモネラ菌など病原菌を媒介する。フンがある=巣が近い、他の個体もいる証拠。

もし発見したものが粒状で、あちこちに散らばっている場合は、ゴキブリがその周辺に潜んでいる、あるいは巣を作っている可能性が極めて高いと言えます。フンを清掃すると同時に、毒餌(ベイト剤)の設置や侵入経路となりうる隙間を塞ぐなど、本格的な害虫駆除対策が急務となります。

シンク下のカビは放置してもいい?

シンク下のカビは放置してもいい?

結論から言うと、シンク下のカビを発見した場合、たとえ少量であっても放置するという選択肢は絶対にありません。見た目の不快感はもちろんのこと、健康、住まい、そして経済的な面においても、様々な深刻なリスクを招くからです。

カビを放置することで引き起こされる深刻なリスク

  • 健康への悪影響:カビは成長すると、目には見えない大量の胞子を空気中に飛散させます。これらの胞子を日常的に吸い込むことで、アレルギー性鼻炎、気管支喘息、アトピー性皮膚炎といったアレルギー疾患を発症・悪化させる原因となります。特に、カビの一種であるアスペルギルスが肺で感染・増殖する「肺アスペルギルス症」は、重篤な呼吸器疾患につながる恐れもあります。(参考:厚生労働省「シックハウス対策」
  • 住まいの構造体へのダメージ:カビは、繁殖の過程で有機物である木材を分解する酵素を放出します。これを放置すると、シンク下の底板であるベニヤ板などが腐食し、強度を失ってしまいます。最悪の場合、床が抜け落ちるなどの事態に発展し、大規模なリフォームが必要になることもあります。
  • 不快な害虫の誘引:カビそのものを餌にするダニやチャタテムシ、湿気を好むゴキブリ、そして腐食した木材を食べるシロアリなど、様々な害虫を呼び寄せる原因となります。
  • 賃貸退去時の経済的負担:カビの発生原因が借主の管理不足(善管注意義務違反)にあると判断された場合、原状回復費用として、高額な特殊クリーニング代や部材の交換費用を請求されるリスクが格段に高まります。

カビは一度根を張ると自然に消えることはなく、むしろ時間とともに深く、広く侵食していきます。「少しだから大丈夫」という油断が、後々の大きなトラブルに繋がることを強く認識し、発見次第、迅速かつ適切な初期対応をとることが何よりも重要です。

賃貸物件でシンク下が臭いときの対処法

賃貸物件でシンク下が臭いときの対処法

賃貸物件のシンク下でカビやカビ臭を発見した際、正義感から「すぐに掃除しなければ!」と行動に移したくなるかもしれませんが、一度立ち止まってください。賃貸物件におけるトラブルを回避するための最も重要かつ最初のステップは、自己判断で対処を始める前に、必ず大家さんや物件の管理会社に連絡し、状況を報告・相談することです。

この手順がなぜ重要かというと、カビの発生原因が、あなたの生活スタイルとは無関係の「建物側の問題」に起因するケースが少なくないからです。例えば、壁の内部での雨漏り、給排水管の経年劣化による水漏れ、建物の構造的な断熱欠陥による異常な結露などが該当します。このような設備側の不具合の修繕義務と費用負担は、法律上、貸主(大家さん)側にあります。もし、あなたが善意で業者を手配して修理を行ったとしても、その費用を大家さんに請求することは原則としてできず、自己負担となってしまう可能性が高いのです。

円滑な連絡・相談のための3ステップ

  1. 客観的な証拠を確保する:まず、カビの現状をスマートフォンなどで詳細に記録します。カビが発生している箇所をアップで撮影したもの、シンク下全体の状況がわかる引きの写真、可能であれば発見日からの変化がわかるように日付を入れて複数回撮影しておくと、より客観性の高い証拠となります。動画でニオイのひどさや水漏れの様子を記録するのも有効です。
  2. 契約書を確認し、然るべき窓口へ連絡する:賃貸借契約書を確認し、トラブル発生時の連絡先が「管理会社」なのか「大家さん」なのかを明確にします。電話で第一報を入れる際は、いつから、どのような状況なのかを冷静かつ具体的に伝えましょう。感情的に相手を責めるような口調は避け、あくまで「相談」という姿勢で話を進めるのが賢明です。
  3. 記録の残る形でやり取りを行う:電話での報告と並行して、撮影した写真や状況説明をメールや管理会社の専用フォームなど、記録が文書として残る形で送信しておくことを強く推奨します。これにより、後の「言った、言わない」といった水掛け論を防ぎ、あなたが適切に報告義務を果たしたことの証明になります。

管理会社への伝え方・例文
「お世話になっております。〇〇号室の〇〇と申します。数日前からキッチンのシンク下がカビ臭く、本日確認したところ、底板に黒いカビのようなものが広範囲に発生しておりました。水漏れの形跡は見当たりませんが、念のためご確認いただきたくご連絡いたしました。つきましては、一度状況を見ていただくことは可能でしょうか。写真をメールでお送りいたしますので、ご確認いただけますと幸いです。」

報告後は、管理会社や大家さんからの指示を待ちます。状況確認のための訪問日時の調整や、その後の対処方針について連絡があるはずです。許可なく勝手に掃除や修理を進めることは、後々のトラブルの原因となるため絶対に避けましょう。

ベニヤ板・木製のカビの取り方

シンク下のベニヤ板や木製だったときのカビの取り方

管理会社へ報告・相談の結果、原因が日常的な湿気対策や清掃の範囲内であると判断された場合や、軽微なカビのため借主側での対応を指示された場合には、素材を傷つけないよう正しい方法でカビを除去する必要があります。特にシンク下の底板に多用されるベニヤ板などの木製部分は、一度カビが根を張ると再発しやすいため、丁寧な作業が求められます。

カビの除去で最も効果的で安全なのは、消毒用エタノールです。カビキラーなどの塩素系漂白剤と違い、木材を変色させたり、金属配管を腐食させたりするリスクが低いのが大きなメリットです。

掃除の前に必ず準備するもの

  • 消毒用エタノール:カビの細胞膜を破壊して死滅させる効果があります。日本薬局方の調査によると、殺菌効果が最も高いのは濃度70~80%とされています。無水エタノール(99%以上)はすぐに蒸発してしまい、カビに作用する前に効果がなくなるため、消毒用を選びましょう。
  • ゴム手袋・マスク(N95推奨):作業中にカビの胞子を吸い込んだり、皮膚に付着したりするのを防ぎます。
  • キッチンペーパーや清潔な乾いた布:使い捨てできるキッチンペーパーが衛生的でおすすめです。
  • ゴミ袋:カビを拭き取ったペーパーをすぐに密封して捨てるために使用します。

カビ取りの正しい手順

  1. 【最重要】徹底した換気と防護:作業を始める前に、必ずキッチンの窓を開け、換気扇を「強」で回します。マスクとゴム手袋を着用し、カビの胞子から身体を守りましょう。
  2. 収納物の完全な撤去:シンク下にある鍋や調味料などをすべて取り出します。取り出した物にもカビが付着していないか一つひとつ確認し、もし付着していれば同様にアルコールで拭き取るか、思い切って処分します。
  3. 胞子を飛散させない拭き取り:絶対にカビに直接アルコールをスプレーしてはいけません。スプレーの噴射圧で、目に見えない胞子がキッチン中に拡散してしまいます。必ず、キッチンペーパーに消毒用エタノールをヒタヒタになるまで十分に染み込ませてください。そして、カビの外側から中心に向かって、一方向に優しく拭き取ります。往復させるとカビを塗り広げてしまうので注意しましょう。汚れたペーパーはすぐにゴミ袋に入れ、常に新しい面で拭くことが重要です。
  4. シンク下全体の徹底除菌:目に見えるカビをすべて拭き取ったら、新しいペーパーにアルコールを染み込ませ、シンク下の底板、壁面、配管の表面など、空間全体を隅々まで拭き上げ、潜んでいる可能性のあるカビの胞子を根絶します。
  5. 完全乾燥で仕上げ:掃除が完了したら、シンク下の扉を全開にし、扇風機やサーキュレーターの風を直接当てて、最低でも半日以上、内部を完全に乾燥させます。ここで湿気が少しでも残っていると、生き残ったカビがすぐに再発する原因となります。

頑固なカビジミには酸素系漂白剤
アルコールでカビを死滅させても、黒いシミが残ってしまうことがあります。このシミを薄くしたい場合、木材へのダメージが比較的少ない粉末の酸素系漂白剤(過炭酸ナトリウム)をお湯でペースト状にし、シミの部分に塗布してしばらく置く方法があります。ただし、これも多少の色落ちリスクはあるため、必ず目立たない場所で試してから行ってください。

100均グッズでできる掃除方法

100均グッズでできるシンク下の掃除方法

「カビ対策は費用がかかりそう」と心配になるかもしれませんが、実は100円ショップで手に入る身近なグッズを賢く活用するだけで、効果的なカビ掃除と予防が可能です。初期投資を抑えつつ、まずは手軽に始めたいという方に最適です。

ここでは、100円ショップで揃えられる、カビ対策に役立つ代表的なアイテムとその活用法を紹介します。

おすすめの100均カビ対策グッズ

アイテム名 主な用途 活用のポイント・注意点
アルコール除菌スプレー カビの除去、全体の除菌 カビの拭き取り掃除の主役。エタノール濃度ができるだけ高いものを選びましょう。
直接スプレーせず、布に含ませて使うのが鉄則です。
重曹 皮脂・油汚れの洗浄、消臭、除湿 水と混ぜてペースト状にすれば、カビの栄養源となる汚れを落とすクレンザーになります。
粉のまま容器に入れて置けば、消臭・除湿剤としても使え一石二鳥です。
メラミンスポンジ 表面的な汚れ落とし 洗剤不要で、こするだけで軽いカビや汚れを削り落とせます。
ただし、研磨作用があるため、強くこするとシンク下の化粧板などを傷つける可能性があるので力加減に注意が必要です。
マイクロファイバー雑巾 拭き掃除全般 極細繊維がホコリや水分をしっかりキャッチします。
アルコールでの拭き掃除や、最後の乾拭き仕上げに最適です。
カビ汚れ防止マスキングテープ カビの予防 配管の根元や床と壁の境目など、湿気が溜まりやすく掃除しにくい隙間に貼っておくと、カビの発生を防げます。
汚れたらテープを貼り替えるだけなので、掃除が格段に楽になります。

合わせ技で掃除を効率化!
例えば、まず重曹ペーストを汚れのひどい場所に塗りつけてしばらく放置し、汚れを浮かせてから拭き取ります。その後、全体をアルコール除菌スプレーで拭き上げる、というように複数のグッズを組み合わせることで、それぞれの長所を活かした効率的な掃除が可能になります。

これらのアイテムを上手に活用すれば、数百円の投資でシンク下の衛生環境を大きく改善することができます。まずは基本的なアイテムを揃え、ご自宅のシンク下の状況に合わせて試してみてはいかがでしょうか。

カビ取り後の嫌な臭いの消臭方法

シンク下のカビ取り後の嫌な臭いの消臭方法

念入りにカビを取り除いたはずなのに、シンク下から漂うあの独特のジメジメしたカビ臭が消えない…。これは非常によくある悩みです。目に見えるカビは除去できても、そのカビが長期間にわたって放出し続けた臭いの原因物質が、木材や壁の内部にまで染み付いてしまっていることが原因です。

このしつこい臭いを根本から断ち切るためには、カビ取り作業と同様に、「徹底的な乾燥」と、臭いを元から分解・吸着する「本格的な消臭対策」の二段構えで臨む必要があります。

ステップ1:臭いの元を断つ「完全乾燥」

前述の通り、掃除が終わったらシンク下を完全に乾燥させることが、臭い対策においても最も重要です。湿気は臭いをより強く感じさせる性質があるため、まずは物理的に湿度を取り除くことが先決。扇風機やサーキュレーターの風を最低でも半日、できれば丸一日当て続けて、内部をカラカラの状態にしましょう。ドライヤーの冷風を当てるのも効果的です(温風は木材を傷める可能性があるので避けてください)。

ステップ2:臭いを吸着・分解する消臭剤の活用

乾燥が完了したら、次に消臭剤を設置します。ここで重要なのは、香りで悪臭をマスキングする「芳香剤」ではなく、臭いの原因物質そのものを吸着したり分解したりする機能を持つ「消臭剤」や「脱臭剤」を選ぶことです。芳香剤は、カビ臭と混ざり合って、さらに不快な複合臭を生み出す可能性があるため避けましょう。

シンク下におすすめの消臭剤タイプと特徴

  • 備長炭・活性炭タイプ:炭の表面にある無数の微細な孔(あな)が、臭いの原因物質を物理的に吸着します。湿気を吸収する除湿効果も高く、シンク下には最適です。効果の持続期間は2~3ヶ月程度のものが多く、天日干しで効果が復活するタイプもあります。
  • バイオ(微生物)タイプ:納豆菌の仲間など、人間にとって無害な微生物(バイオ)が、カビ菌や悪臭の原因菌を食べることで臭いの発生を元から抑制します。化学物質を使用していないため、食品や食器を収納する場所でも安心して使用できるのが最大のメリットです。効果は約3~4ヶ月持続します。
  • 重曹:手軽さではNo.1。弱アルカリ性の重曹は、カビ臭などの酸性の臭いを中和して消臭します。ジャムの空き瓶などに粉末のまま入れて、通気性の良い布で蓋をして置いておくだけです。湿気を吸って固まってきたら交換のサインです。
  • コーヒーかす:淹れ終わったコーヒーのかすも、乾燥させれば活性炭と同様の多孔質な構造を持つため、優れた消臭剤になります。お茶パックなどに入れて置いておくと、ほのかな香ばしい香りが楽しめます。ただし、湿っているとカビの原因になるので、必ずカラカラに乾燥させてから使用してください。

これらの消臭剤をシンク下の隅に設置し、定期的に交換することで、カビ臭のない快適な状態を維持することができます。

シンク下のカビができた場合の賃貸の退去費用とトラブル回避術

防カビシートなどを使ったシンク下のカビ対策

  • 防カビシートなどを使ったカビ対策
  • カビだらけだと賃貸退去費用は高額に?

防カビシートなどを使ったカビ対策

一度大変な思いをしてカビをきれいに除去したのですから、二度とあの不快な光景とニオイに遭遇しないための「徹底した予防策」を講じることが何よりも重要です。カビ対策は、特別なことを毎日続ける必要はありません。日々の生活の中でのほんの少しの心がけと、便利な予防グッズの活用で、カビが繁殖しにくいクリーンな環境を維持することが可能です。

カビの発生サイクルを断ち切るための、具体的で効果的な予防策を紹介します。

【基本の徹底】今日からできるカビ予防の生活習慣

  • 1日10分の換気タイムを設ける:最も簡単でありながら、最も効果的な予防策が「換気」です。特に湿気が発生しやすい、料理の後や洗い物が終わった後に、シンク下の扉を5~10分程度全開にする習慣をつけましょう。キッチン全体の換気扇を回しながら行うと、より効率的に空気が循環します。
  • 収納は「腹八分目」を心がける:物をぎゅうぎゅうに詰め込むと、空気の通り道がなくなり、湿気が滞留する原因となります。収納量は全体の8割程度に抑え、物と物の間に隙間を作るように配置しましょう。これにより、カビの早期発見にも繋がります。
  • 調理器具は完全に乾かしてから収納:濡れた鍋やフライパンをそのまま仕舞うのは、自らカビの温床を作っているようなものです。水滴が残らないよう、布巾で拭き上げた後、さらに少し時間をおいて完全に乾燥させてから収納することを徹底してください。
  • こまめな拭き掃除:シンク下に調味料をこぼしたり、食材のカスが落ちたりしたら、すぐに拭き取る習慣をつけましょう。月に一度は、収納物を一度全部出し、アルコール除菌スプレーで全体を拭き上げる「予防掃除」を行うと万全です。

【予防グッズの活用】環境をコントロールする賢いアイテム

日々の習慣に加えて、便利な予防グッズを導入することで、カビ対策の効果は飛躍的に向上します。

シンク下におすすめの予防グッズ

  • 置き型除湿剤:湿気を物理的に吸収してくれる、予防の基本アイテムです。特に湿気が溜まりやすい四隅に設置しましょう。タンクに水が溜まるタイプは、満水になったら放置せず、こまめに取り替えることが重要です。
  • 防カビ・防湿シート:シンク下の床面にあらかじめ敷いておくことで、底板を湿気や汚れから守ります。選ぶ際は、防カビ機能はもちろん、「防水性」の高いアルミ製やEVA樹脂製のものを選ぶと、万が一水や調味料をこぼしてしまっても、サッと拭き取れるため衛生的です。サイズに合わせて自由にカットできるタイプが便利です。
  • すのこを敷く:床面に直接物を置かず、すのこを一枚敷くことで、床と収納物の間に空気の層ができます。これにより通気性が格段に向上し、湿気がこもるのを防ぎます。
  • 吊り下げタイプの防カビ剤:バイオの力でカビの繁殖を抑制する製品など、シンク下の天井部分に貼り付けたり、扉の内側に吊り下げたりするタイプも省スペースで効果的です。

これらの習慣とグッズを組み合わせることで、カビにとって住みにくい環境を作り上げ、長期的にシンク下を清潔に保つことができます。

カビだらけだと賃貸退去費用は高額に?

シンク下がカビだらけだと賃貸退去費用は高額に?

「もしシンク下のカビがひどくなってしまったら、退去時に一体いくら請求されるのだろうか…」これは、賃貸物件に住む誰もが抱く大きな不安です。結論から述べると、カビの発生原因が借主の管理不行き届きにあると判断され、かつ被害が甚大である場合には、原状回復費用として高額な請求を受ける可能性は十分にあります。

賃貸契約におけるこの問題の根幹には、借主が負うべき二つの重要な義務が存在します。それは「善管注意義務」「原状回復義務」です。

  • 善管注意義務(善良なる管理者の注意義務):民法で定められた、「社会通念上、客観的にみて通常要求される程度の注意を払って物件を管理・使用する義務」のことです。カビに関して言えば、「結露が発生したらこまめに拭き取る」「定期的に換気を行う」といった、カビの発生を予防するための一般的な行動がこれに当たります。
  • 原状回復義務:借主の故意・過失、または善管注意義務違反によって物件に生じさせた損傷を、退去時までに元に戻す義務のことです。

つまり、カビの発生原因が、貸主(大家さん)が責任を負うべき建物の構造的欠陥や設備の老朽化ではなく、借主が上記の「善管注意義務」を怠った結果であると見なされた場合、そのカビを除去し、もしカビによって損傷した部分があればそれを修繕する費用は、「原状回復義務」として借主が負担することになるのです。

借主(あなた)の費用負担となる可能性が高いケース 貸主(大家さん)の費用負担となる可能性が高いケース
具体的な状況 ・日常的な換気を著しく怠り、部屋全体が常に多湿だった。
・窓や壁の結露を何ヶ月も拭かずに放置し、カビが広がった。
・シンク下で水漏れを発見したにもかかわらず、貸主へ報告せずに放置し、カビや腐食が拡大した。
・建物の断熱材不足が原因で、通常では考えられないほどの結露が発生する。
・壁の内部や天井からの雨漏りが原因でカビが発生した。
・入居した時点で、すでに壁紙の下などにカビが存在していた。
費用負担の根拠 借主の「善管注意義務違反」による人為的な汚損・損傷。 建物・設備の経年劣化や構造上の瑕疵(かし)。通常の生活では防ぎようがないもの。

請求される費用の額は、カビの範囲や浸食の深さによって大きく変動します。表面的なクリーニングで済む場合は1㎡あたり2,000円~3,000円程度が相場ですが、カビがベニヤ板の内部まで根を張り、部材の交換が必要になった場合は、材料費と工賃で5万円~10万円以上の費用がかかることも珍しくありません。

退去時の高額請求トラブルを避けるために
万が一、退去時の立ち会いで高額な原状回復費用を請求された場合は、その場で安易に合意書面にサインをしてはいけません。必ず「費用の詳細な見積書」を要求し、一旦持ち帰って内容を精査する時間をもらいましょう。その上で、国土交通省が公表している「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」と照らし合わせ、請求内容が正当なものかを確認します。不当に高額だと判断した場合は、ガイドラインを根拠に貸主と交渉しましょう。交渉が難航する場合は、一人で抱え込まずに、各自治体の消費生活センター国民生活センターといった公的な相談窓口に助けを求めることが、最終的な解決への近道です。

シンク下のカビが賃貸住宅に発生したときのポイントを総括

最後に、この記事で解説した賃貸物件におけるシンク下のカビ問題について、重要なポイントをまとめます。万が一の時に慌てないよう、ぜひ覚えておいてください。

  • シンク下のカビを見つけたらまず大家さんや管理会社に連絡する
  • カビの原因が建物側か生活習慣かで見極めることが重要
  • 連絡や担当者とのやり取りの記録は必ず残しておく
  • 自分で掃除する際は換気を徹底しアルコールを使用する
  • カビの胞子を吸わないようマスクや手袋を着用する
  • 塩素系漂白剤は木材を傷める可能性があるので注意が必要
  • 掃除後は扇風機などで内部をしっかり乾燥させることが再発防止の鍵
  • 100均グッズもカビ掃除や予防に有効活用できる
  • カビ取り後の臭いには徹底的な換気と置き型の消臭剤が効果的
  • 予防には防カビシートや除湿剤の設置がおすすめ
  • 物を詰め込みすぎず空気の通り道を作ることが大切
  • 結露の放置や掃除不足によるカビは借主の費用負担になる可能性が高い
  • 建物の構造や設備の欠陥によるカビは貸主の費用負担となる
  • 退去時に費用を請求されたら必ず詳細な内訳を確認する
  • 不当な高額請求にはガイドラインを元に交渉し専門機関に相談する

 

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